【対談】Aコーチ対談
今シーズンAコーチを務めてくださっている、東北大学男子ラクロス部OBの、佐野清さん(ヘッドコーチ)、早川崇さん(OFコーチ)、多喜乃葉弥さん(DFコーチ)、柿崎康太さん(OFコーチ)にお話をお聞きしました。
コーチとして関わる上で意識していること
司会:本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます!
まず始めに、今年度プレイヤーからコーチになったお二人(多喜乃、柿崎)はコーチとして何か意識していることはありますか?
柿崎:今年からっていうのは俺にとってはそこまで関係ないと思います。俺はプレイヤー時代から、戦術理解度がそこまで高くなかったので、今も戦術の面に関してはかなり崇さんに頼ってます。(笑)その分、俺なりに技術指導に力を入れて、崇さんと差別化できるように意識しています。
多喜乃:去年までプレイヤーとして戦ってきたので、どちらかというと感覚的な部分もあるのですが、基本的に気になったところはすぐにプレイヤーとコミュニケーションをとるように意識しています。
佐野:去年、崇と葉弥は選手とコーチという関係だったのが、今年コーチとして同じ立場になって、関わり方は変わった?
多喜乃:えもい。(笑)
早川:葉弥は、コーチとして俺と結構違うベクトルな気がしていて、俺よりもっと厳しくできるタイプだと思います。俺が言わないところを葉弥が言ってくれることを期待しています。去年一緒にコーチをしていた拓也さん(昨年度Aチームコーチ 30期片山拓也)とたまけんさん(昨年度Aチームコーチ 30期玉林健)は、割とコーチとして俺と近い感じがしていて。拓也さんはたまに厳しいことを言ってくれたり、たまけんさんは色々なところを広く見てくれたりするけど、ベクトルは近かったと思います。逆に葉弥と俺はコーチとしてのベクトルがかなり違うので、葉弥の目線はありがたいと思っています。あとは、葉弥とは同期なので普通に話しやすいです。
柿崎は、さっき言ってくれたこともそうだし、個人的に上手さを維持して、憧れのコーチであって欲しい。俺は戦術をやるから、柿﨑はBJ戦で良いショットを決めて、BJ側のエースであって欲しいです。最後の全体集合の時にも確かになって思うことを言ってくれるので、去年のコーチ体制とはまたちょっと違った感じでお互いに補完できていると思います。
多喜乃:ちなみに俺はやっぱりエモいの一言に尽きます。
佐野:柿崎は、崇とコーチになって、去年との違いはある?
柿崎:2年前から、ほぼ同期みたいな感覚でやらせてもらっているのであまりありません。AT陣の絆。(笑) 1個上が31期でよかったなと思っています。先輩としてリスペクトしていますが、かなりやりやすいです。
多喜乃:清さんはコーチとして意識していることや、俺らに対してのアドバイスなどはありますか。
佐野:俺はダメなものはダメみたいな感じでいるけど、3人は選手だった頃の自分と近いし、現役にできないことがあることを理解しているから、思いやりを感じるな。優しい。役割分担できていて良いとも思うけど。でも、崇は厳しいと思います。崇は、現役時代に怪我していた時期を含め、トータルで2年半くらいコーチっぽいことを一緒にしてきて、OFだけではなく、チーム全体のことも見てくれているので、助かっています。俺がそういう部分にあまり関わらなくてもチームが動いているのは崇のおかげ。
昨年のチームとの違い・最近のチームに思うこと
司会:次に、去年のチームと今年のチームではどのようなところが違うと感じていますか。
早川:ここに関しては、やっぱり若い選手主体のチームになっているところだと思います。体制でいうと、そもそも下級生の方が多いチーム。特にOFは、もう1回ゼロから組んでいる感じがかなりあります。去年は健生(昨年度主将 32期吉田健生)と柿崎にはまる役を探すみたいな、かなり絞ったところをさらに絞っていく作業のような感じでした。突き詰めていくというか。今年はまたもう1回それを広く考えて、できるだけ選手の可能性に蓋をしないように、広いところからどういう組み合わせが1番良いか、何が1番やりやすいかを考える作業みたいな感じで、ある種俺自身も楽しくやらせてもらってるって感じがあります。
あとは、スタッフが最近展開してきている感じがしますね。すー(主務兼MS 34期牧原すみれ)の協賛とかが良い例ですが。基盤ができたからこそ、各々スタッフがやりたいことを主張してきている気がする。個人的にはそれが良いことだなと思います。
多喜乃:逆に、意外と難しいのかな。基盤ができあがりつつもやりたいことが広がってきて。
早川:実際プレーで必要かどうかは話が違ってきてしまう。スタッフがとても頑張ってくれたことが、1割くらいしか役に立ちませんでしたという例も起こったりするので、プレイヤーやコーチと、スタッフで上手くすり合わせするのが必要だと思います。もっとプレイヤーが求めてることを要求した方が、スタッフの頑張りが直接繋がっていいんだろうな。
多喜乃:清さんはどう思いますか。
佐野:去年のチーム作りは32期の代が中心だったから、今年は下級生が積み重ね始めるタイミングだと思う。ある種のサイクルのようなものの最初の部分だから、今年どういうチーム作りが良いかは、一昨年の31期が4年生だった頃に似てると思う。一昨年3年生だった健生みたいなエネルギーが、下級生からもっと出るといいのかな。去年は、ほとんど強く言ったことがなく、自分たちで考えなさいというスタイルで、インプットもあまりさせていませんでした。反対に今年は、組織とか環境を作る必要がある分、インプットさせることも多い。経験値が浅い選手が多いので、何色にもなれると思いますが、そこで主体性が失われると、来年再来年で厳しくなるのが見えているので、主体性は消さないようにしつつ、インプットさせるというバランスを保つのが難しい。
チームの運営の部分ではみんな頑張ってくれているけど、日本全体としてレベルが上がってる気がする。関東の大学を見ていても、SNSは当たり前にやっているし、アナライジングもJAPANも力を入れているので、それについていかないと組織として強くなっていかない。ですが、取り急ぎ今は、それに見合った、ラクロスの水準の高さを維持することが優先。評価されるべきはまずラクロスだから、ラクロスのレベルが担保されていないといけないなとスタッフの活動を見ながら思う。スタッフの活動の良し悪しはもちろん色々あると思うけど。スタッフについては、評価されるべきは評価されるべきだと思うけど、自分の活躍とか自分のパフォーマンスとかはさておいて、組織に捧げられるかの意識を大事にしてほしい。俺がいたからチームが強くなったみたいなことはどうでもよく、チームが勝ったことの方がもっと大事。スタッフは立ち回りが難しいけど、自分がやっていることが褒められたいという価値観が前に出てきてしまうと、本質と外れたアウトプットが生まれてくることになる。褒められることで自分は短期的に幸せになるかもしれないけど、長期的に見てチームが幸せになっているのかを、考えないといけない。選手もそう、どこまで組織と個人の両輪をまわせるか。スタッフも選手も強い個がないと、組織は大枠として大きくならない。言われたことをやるだけの人が全員だと主体性が芽生えてこないから、主体性は必要だけど、主体性の行った先が、自己満なのか組織の成長なのかを、うまく矯正しながらいい感じになっていったらいいよね。俺はチームに長年関わっているから感じるけど、スクラップアンドビルドじゃなくてどんどん広くなっていく中に自分がいるみたいな感じを作れるかが大事なんじゃないかな。アナライジングも短期的に結果を出そうとするのではなく、作ったものを来年どう使うかというレベルで話をしないといけない。そうなってくると、自分は褒められたいという価値観だと、長期的な目線が出てこない。なにが大事なんだっけというのをマクロで捉えられるかを考えてみてもらいたい。
多喜乃:4年生にも同じことが言えそうな感じがする。引退した時に、自分はチームに何を残せたのかというのが大きなテーマだと思う。
佐野:学生主体のチームであるあるなのは、4年生が「僕らのチームだから」「来年はどうなろうと知ったこっちゃない」みたいになること。それは間違いではないけど、大枠で見たときに流れは続いていて自分たちはその中の一部だから、受け継がれてきた文化や財産をつなげていく感覚がないと困る。難しいけどね。
多喜乃:話が着地しきった感あるね。(笑)
佐野:してない、してない。(笑)
早川:スタッフに関してはちゃんと選手と話すことが大事だと思う。清さんがおっしゃっていたように作っていく過程の序章段階っちゃ序章段階だと思っているから。
多喜乃:小さい話だと、練習がスムーズに進むかどうかはすごく大事だと思う。これも大きい枠の1つだと思う。
佐野:練習面に関して間違いないのは、成長した結果が大事だから、練習が上手くこなせたことよりも、練習で上手くなったことの方が大事。スタッフもそう捉えられるか。急にメニューを変えることが起こり得る現場であってほしい。例えば6on6を足しますとか、やっぱりEMOにしますとか。生きてるチームにとって何が必要で、今何をすべきかというのは変化しているから、もう少し話したら良いアウトプットが生まれるかもしれなかったのに、時間で切ってしまうともったいないし、チームにとってベストではない。柔軟性が大事。もちろん練習フォーマットの大枠も大事だけど。メニューを作る人も一緒。結局それで上手くなったのか、何を得たかったのかが大事。スタッフもそういう視点を持ってうまく調整できるといいよね。もちろん今でも調整してくれてると思ってるけど。
注目選手
司会:今シーズンを通じて、注目している選手は誰ですか。
多喜乃:崇とも朝話したけど、俺をワクワクさせてくれよっていう。まだ、いません。(笑)
佐野:城戸信之助(35期OF 城戸信之助)じゃない?信之助は実は鍵を握ってそう。健生に似てる。チームを突き動かしていく、前に進めるエネルギーが必要。そういう選手が出てくると良いよなって思っていて。誰かなって考えるとやっぱり信之助。
多喜乃:匡一朗(34期DF 前嶋匡一朗)と古木(34期DF 古木亮介)は、釘を刺すわけじゃないけど、今年頑張らなかったらいつ頑張るのっていう感じではありますね。
早川:このテーマで釘刺す。(笑)
多喜乃:もう一個釘刺すってなると、やっぱ将大(33期DF 野口将大)。期待も込めてね。将大さんいつ上手くなるんですか?早く上手くなってハキハキ喋って、遥哉(DFリーダー 33期米田遥哉)と一緒にDFを引っ張っていってほしい。
佐野:ラクロスの話だったら、大貴(34期OF 笠原大貴)。
多喜乃:だいちゃん読みながらニコニコしてるだろうな。(笑) これは、注目選手ですか、頑張ってほしい選手ですか?
佐野:注目です。上手くなってる。もうあと1ピース、2ピースでもっといい選手になれそう。ちゃんと頑張ってきたことが身になってきた。
多喜乃:積み上げてきたものができてきている感じがあるんですね。
佐野:まだちょっと気持ちが弱いけど。クリースの動きとかダッジとかをよく見ても、やっぱり基礎の完成度が高い。練習を見てて感じる。シーズンが始まってから3年生の中で一番成長したんじゃないかな。
柿﨑:俺は駿太郎(35期OF 藤本駿太郎)です。本当に昔の自分を見てるみたいで。でも駿太郎は、俺が2年生の時より先輩とコミュニケーションをとってたり、のびのびやってたりする。色々吸収してるんじゃないかなって思うので、めっちゃ伸びそうだなと期待しています。増量も頑張ってはいる。75キロくらいいけば、日本を代表する選手になれるんじゃないかなと思います。
多喜乃:じゃあ、崇さんかな、次。
早川:由元(34期OF 由元孝汰)とか瑠人(34期OF 鹿島瑠人)とかは、去年俺がAチームで見てたのもあるけど、もうちょっと背負って欲しいな感はあるかな。
多喜乃:もっとできるやろって。
早川:点取るビジョンはどっちも見えてる。俺の中でこうやってほしいっていうのがかなりあって、活躍するビジョンも見えてるんだけど、あと1歩、もうちょっと点取り屋になってほしいな感はある。怪我もあると思うんだけど、2人は頑張ってほしい。
俺的には空岡(OFリーダー 33期空岡宏起)はよくやってるかなと思います。よくへこたれずにここまでやってるなって。去年散々俺に怒られて、それでも今年OFリーダーやるんだと思いつつ、ここまで来たけど、彼なりに頑張ってるんだろうなあって。ラクロスに関して言えば、ああしてほしい、こうしてほしいはあるけど、少なくとも雄吾(OFリーダー 34期柳下雄吾)にとってはかなり助かってる感じがする。OF体制としては悪くない体制でできてるんじゃないかな。シーズンインしたらまたかなり空気変わると思うし、勝たないといけない試合とかもあるけど、そこでまた頑張って欲しいなと思います。
多喜乃:清さん、DFからも一人お願いします。
柿崎:みんな名前出してもらえると嬉しいから。(笑)
早川:俺の代の龍鷲戦の対談で清さんに僕の名前出してもらったとき嬉しかった。(笑)
ええ、僕ですか!?って。龍鷲戦前にその動画3周した。(笑)
佐野:DFは遥哉に頑張ってもらうのは当たり前だけど、ただ責務がかなり大変だろうなとは思ってる。彼は3年目だし。
多喜乃:そうですね。2年生の龍鷲戦の時からスタメンだったらしい。
佐野:そういう意味では、最後どう締めくくるのがいいのかは、遥哉にとってすごく大事な時間だろうなと思うし、もっと頑張れると思う。今まで頑張ってきたやり方とは違うやり方で頑張らないといけなくて、彼が苦手な部分に挑戦してると思う。必ず伸びていくはずだと思ってるし、その頑張りをコーチ陣は見ているから、結果になって返ってくるといいよねって思う。今うまくいかなくても、あきらめずに頑張ってほしいな。自分が苦手なところに向き合わないといけないことにやっと気づいた。結局去年も試合に出れなくて悔しかったと思うし、そこからさらに伸びなきゃいけないっていうのを今DFリーダーになって直面してる最中だと思う。そこを乗り越えて先にあるものが、良いものだといいねっていう感じかな。ずっと言ってるけど、DFはやっぱり強いリーダーシップが必要だと思う。頑張れ。
多喜乃:実は頑張ってほしい選手は裕大(Gリーダー 33期横田裕大)。やっぱりDFの要だと思いますから。とても上手なGが2枚抜けて、大変なんだろうなとは思うけど、頑張ってね。メッセージでした。 (笑)
メッセージ
司会:最後に、部員へメッセージをお願いします。
多喜乃:一人一人が目標に向かう大きなベクトルが無いと、それを引っ張っていくリーダーたちも困るというか。結局まとまったものが小さいものになると思うので、本当に各々、何か信念なり残したいものみたいな、大きなものを持って取り組んでほしいなって感じています。
佐野:この対談は全体的に、現役の子たちにこうしてほしい、ああしてほしいっていうはっぱをかける、激を飛ばす、耳の痛い対談になっちゃった。でも単純にそのくらい期待しているってこと。やらなきゃいけないから来るモチベーションはたくさんあると思うんですね。でも、こうなりたいっていう願望の方が、エネルギーとして強いと思うので、危機感を持ちつつも、日本一になりたいという思いを持って頑張ってほしいというのがコーチからのメッセージです。この対談を読んでどう思うかはみんな次第。受け取り手に委ねられてるし、行動もみんなに委ねられてる。みんなは何を選択しますか?
(文責:黒沼綾乃)
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